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アイヌ文様の世界 ~北海道と樺太の違い~ [愛奴通信:AINU journal]






この広い宇宙の中の生物でおそらく文様を持つことができたのは人間だけではないかと当初思っていました。しかし、そうではないと今私は考えるようになりました。人間は文様を持っていなかったからこそ「持ちたい、持とう」と思ったのではないかと、逆なのだと思ったのです。
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アイヌ文様は彫刻と刺繍に多く施されます。
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刺繍文様は女たちの手によって製作されます。母から娘へ、そして孫娘へというふうに女の伝える重要な仕事です。つまり刺繍文様をみれば、その女の所属する家系が、かつては判ったわけです。
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アイヌの女たちは、その家のあるいはそれぞれの置かれている地方の歴史や希望を背景にしながらも、実に自由に文様を刺しています。女の思いが込められていると言っていいと思います。
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…どの衣服にも満遍なく共通している文様があります。この共通のする文様こそが、アイヌ文様の基礎となる文様といえるわけです。アイウシモレウという二つの文様ですが、アイウシは刺(とげ)のあるという意味で、モレウは渦巻きの意味があります。
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魔物というのは、これもアイヌにとってはカムイ(神・自然)なわけです。このカムイというのは、アイヌ(人間)と同じように、刺や渦巻きといったものを嫌うものだから、寄りつかないと考えたわけです。また、一方ではそれをアイヌが身につけることによって、自然と一体になりうる、力やエネルギーを受け取れるという考えもあったのかもしれません。

文様が置かれる場所が袖口だったり、襟元、裾だったりしますが、そういう場所から魔物が侵入するのだという考えによるものです。また、衣服の背後にカムイシキと呼ばれる神様の目が置かれたりするのは、その目によって守られるという考えによっています。

アイヌ文様は、アイウシとモレウという文様を主としながら、左右対称の連続模様になっています。衣服という限りあるキャンパスに文様を刺すわけですから、いろいろの技術が必要になってきます。連続模様を止める技術が必要になります。そこで、ハート型の文様やつり鐘型の文様が止めの部分に多く使用されるようになるわけです。また、中継ぎの部分には、シク文様といわれる菱型だったり三角形の文様が違和感なく使われます。
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…ただ、樺太における文様には、具象的な文様に近づいていると思われる部分があるといえます。

「アイヌ文様の世界」 知里むつみ(知里森舎代表)

『アイヌ民族写真・絵画集成 3 文様』 監修:萱野茂 編集:知里むつみ より引用

(知里むつみさんは、知里幸恵さんの姪です)

アイヌ紋様基礎講座
http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Icho/2648/lernejo/aynu/ikarpe.htm

北海道アイヌと樺太アイヌは、魔除けの意味をもつ文様の基本パターンは、

●アイウシ(刺)
●モレウ(渦巻き)
●シク(菱型)

ほぼ同じなのですが、知里むつみさんの文章にあるように、
基本パターンとは異なった文様のパターンも持っていたようです。

僕は、文様よりも、着物のデザインそのものに、両者の違いを強く感じます。

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シサム(隣人)たちの文様
アイヌ文様は縄文土器に由来し、八世紀ごろ石狩川流域に発生したと言われるが、樺太に住んでいたアイヌを経由してシベリア諸民族、さらには中央アジアへと類縁の文様をたどることもできる。

樺太アイヌのマーテクフイミイ(女性服)
提供:資料館ジャッカ・ドフニ 撮影:青柳文吉



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北海道に移り住んでからも、民族伝統の文様を大事にしていた樺太アイヌの女性

撮影:掛川源一郎

『アイヌ民族写真・絵画集成 3 文様』 監修:萱野茂 編集:知里むつみ より引用

明らかに、樺太アイヌの着物のデザインは、北海道アイヌとは雰囲気が違っていて、
洋風というか大陸風です。
(もちろん、和風なデザインのものも見られます)

特に、頭飾りのマタンプシが、北海道アイヌは鉢巻なのですが、
樺太アイヌは、帽子です。
(帽子っぽい形状のもの?)
当ブログの別記事に、樺太アイヌの藤山ハルさんの写真がありますが、
やはり、鉢巻ではなく、帽子をかぶっておられます。

『オホーツク街道』 ~樺太アイヌ語の最後の話し手~
http://kahunatrade.com/blog/ainu/1262.html

樺太には、アイヌ以外にも、
ニヴフ(ギリヤーク)や、オロッコ(ウィルタ)と呼ばれる他の民族も住んでいたので、
陸続きである、彼らとの交流は多かったはずです。
当然ながら、衣装(ファッションセンス)は、似た様なものになると思います。

実は、トンコリは、樺太アイヌだけでなく、
ニヴフ(ギリヤーク)や、オロッコ(ウィルタ)の人々にも、
演奏されていたようです。

《シンリッウレシパ(祖先の暮らし)》第6回 北方の楽器たち(3)
http://www.ainu-museum.or.jp/siror/monthly/201508.html [月間シロロ8月号]

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2007年6月16日に、横浜のぷかり桟橋に停泊中のホクレアの横で、
アイヌによるカムイノミが行われました。
その時に、アイヌの文様と、ポリネシアン・タトゥーが、
どこかしら似たようなパワーを放っているのを強く感じて、

【寒い所のアイヌは、着物に文様をつけているけど、
暑い所のポリネシアンは、直接肌に文様をつけた…】

みたいな話を、そばにいた、琢磨仁さんとしたような記憶があります。

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TAVAさんの腕にはタトゥーがあります。

Photo by Jin Takuma

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ハワイイ島のカヌー、マカリイのキャプテンの、
CHADDさんの腕にもタトゥーがあります。

Photo by Jin Takuma

ドキュメンタリー映画「TOKYO アイヌ」プロモーション用映像
https://www.youtube.com/watch?v=_cxFfl9mcyU

[4:08] 国境を越えて
2007年6月16日にホクレアを訪れたアイヌの方々の様子がちらっと出てきます。

PEACE








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