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萱野茂・貝澤正 両氏の陳述 ~二風谷ダムとアイヌ~ [愛奴通信:AINU journal]






…有史以前からアイヌが持っていたアキアジの捕獲権をアイヌに返してほしいのであります。

…法律も条例もしょせん人間が人間のためにつくったものであり、運用次第で特例を設けることもできるでありましょう。

二風谷ダムというものはアイヌ民族にとっては招かざる客そのものであります。招かざる客がどうしても来るというのであれば、持参金のかわりに、持参物として沙流川アイヌの主食シペ(鮭)、アキアジの捕獲権を持参してくることを強く要求するものであります。

…残雪のころから初夏の季節まで、魚の切れない川、それが沙流川であり、アイヌにとっては食糧を貯蔵している倉と同じように思っていたのであります。

アイヌ民族の不幸は、西隣りの日本国が、日本人がアイヌモシリへ土足でどかどかと入ってきたころから、口では言えない悲しいことばかり、苦難の道が始まったものであることを先生方に知ってほしいのであります。

(”萱野茂氏の陳述”より抜粋)
…………

わずか120年の間に、よくも北海道をこんなに荒らしたものだと驚くのは私だけじゃないと思います。 魚を捕り尽くし、木を伐り尽くし、地下資源を掘り尽くし、必要がなくなったと言って鉄道を廃止するなど、そのうえ、人口が少ないからと北海道を核のごみ捨て場にしようとして、いま計画している…

開発とは何であるか、海岸や河畔の木を伐り尽くし、海辺や川辺をコンクリートでかため、近海には魚も回遊できず、川には休む淀もなく、産卵する砂利を取り尽くしている。その上、魚のえさになるプランクトンの原料になる広葉樹を伐り、育成が早いからと針葉樹の人工造林で山をおおっています。いまのままでの北海道の開発が進めば、北海道は生物も住めなくなる死の島になるんではないかと心配しているのは私だけではないと思います。

…狩猟民族であるアイヌに狩猟権と漁業権を与えるようにしていただきたい…

もうけるのは東京や大阪の大企業だけで、地元には何もメリットがないのであります…ダムが本当に必要なのか。見通しのないままに大きな国費を使って強行する。役人と企業と政治家だけのためではないか…

強制的に農業に転換させて、やっと定着したところで土地を取り上げようとしているから、再び狩猟民族に返してもらって、狩猟と漁業で生活できるように補償してほしいということ。それから、沙流川周辺のコタンの裏山にある社有林全部を元の地主であるアイヌに返してほしい。ただで北海道の土地を取り上げたのであるから、ただでアイヌに返してほしい。

(”貝澤正氏の陳述”より抜粋)

『先住民族アイヌの現在 (朝日文庫)』 本多勝一著 より引用

これは、アイヌの土地をダム建設のために強制収用しようとする開発庁側に対し、
二風谷のアイヌのなかで、最後まで買収に応じなかった、萱野茂・貝澤正両氏が、
1988年2月15日に札幌で開かれた北海道収容委員会の審理に出席した時に、
陳述した内容の一部です。

萱野茂・貝澤正両氏の陳述の全文は、
本多勝一さんのこの本で、初めて紹介されました。

【後の裁判で、二風谷ダムは違法となりますが、存続することになります】
(なんのこっちゃ)

1997年(平成9年)に二風谷ダムの建設は完了し二風谷地区は水没したが裁判は継続され、同年3月27日に二風谷ダム建設の是非について札幌地裁は判決を下した。この中で札幌地裁は土地の権利取得裁決の取消しなどを求めた原告側の訴えをいずれも棄却したが、「工事のための土地取得などはアイヌ民族の文化保護などをなおざりにして収用を行ったことにより、土地収用法第20条3号の裁量権を逸脱している」として収用は違法である判断した。
…………

また、アイヌ民族を国の機関としては初めて先住民族として認めた

二風谷ダム -Wikipedia より引用

あるダムの履歴書:二風谷ダム(1)
https://www.youtube.com/watch?v=4HxpQz8GZpM

あるダムの履歴書:二風谷ダム(2)
https://www.youtube.com/watch?v=ySncHMWOwD4

あるダムの履歴書:二風谷ダム(3)
https://www.youtube.com/watch?v=6IWfXK3s6ZQ

あるダムの履歴書:二風谷ダム(4)
https://www.youtube.com/watch?v=LpkzzPTErmA
[4:41] チノミシリ(アイヌの祈り…の対象となるもの)
[8:31] 病床の貝沢正氏からの(最期の?)メッセージ

あるダムの履歴書:二風谷ダム(5)
https://www.youtube.com/watch?v=91f8FEqMqgY
[0:00] 貝沢正氏葬儀 オッカヨクワ(男性の墓標)

あるダムの履歴書:二風谷ダム(6)
https://www.youtube.com/watch?v=xnRerCWWsyc
[4:02] 裁判での萱野茂氏のアイヌ語でのスピーチ

あるダムの履歴書:二風谷ダム(7)
https://www.youtube.com/watch?v=XjktG086NbM

あるダムの履歴書:二風谷ダム(8)
https://www.youtube.com/watch?v=62HEldjtaUk

あるダムの履歴書:二風谷ダム(9)
https://www.youtube.com/watch?v=uZn5ZYloxoE

アイヌの墓標


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1992年2月、北海道ウタリ協会副理事長故貝澤正さんの葬儀が沙流地方二風谷で行われた。アイヌ伝統文化継承に積極的であるこの村でも、アイヌプリ(アイヌの習慣)のよって行なわれたのは、20数年ぶりであったという。
遺言により催主は萱野茂。

『アイヌ民族写真・絵画集成 1 祭礼』 監修:萱野茂 より引用

オッカヨクワ(男性の墓標)が写っています。

044.jpg
白老地方では、男性用の墓標は槍先、女性用の墓標は縫い針の頭部をかたどったものだといわれます。

アイヌ文化入門 より引用

アイヌとは人間のことです。
僕は、様々な問題や様々な感情に、自分が流されそうになる時には、

「それは、人としてどうなんやろう?」

って考えるようにしています。
そうすると、答えみたいなものが見えてくる時があります…
(ただ、同時に、人間って何?っていうテーマが常にある)

PEACE








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